『アヤンナの美しい鳥』

アヤンナの美しい鳥 (メディアワークス文庫)
マサト真希
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読了。

インカ帝国末期を舞台にした、孤独な少女と奴隷の異人の若者の、せつないふれあいを描く物語。


アヤンナは雷神イリャパの呪い子と呼ばれる醜い傷を持つ少女。インカ帝国の片隅にあるワカの国の高地の村で、うとまれ蔑まれつつようやく暮らしていた。ある日、低地の市場に出かけたアヤンナは、売りに出されたひとりの奴隷に吸いよせられていた。かれは明るい髪の毛と白い肌、高地の空のような青い眼の異人の若者で、アヤンナの視線をまっすぐにうけとめた。美しいかれの脚は故意に傷つけられており、愛玩用であることが明らかな奴隷に買い手はつかない。そのうち周囲に呪いの傷を見とがめられて侮蔑の言葉と暴力を振るわれたアヤンナは、憤りのあまり魔法を使ってひとびとに強風の渦をさしむけていた。ちりぢりになった群衆のあとに残されたのはリリエンという名の奴隷。祖母にみだりにつかうなと戒められていた魔法を使ってしまったアヤンナは、かれの身柄を引き受けなければならなくなっていた。



ネットで推されていたのをみたあとで、ちょうどリアル書店で見つけたので読んでみました。

面白かった、そして素敵でした。

虐げられて育ち、硬く強張っていたふたつの魂の出会いと、不器用な接近からしだいに生まれてくるふれあいとぬくもり。

餓えてひび割れていた心にひびき、しみてくる、ひとつの言葉、つながる会話。

リリエンの語るふしぎで意外なおとぎ話が、ふたりの関係に宝物のようなきらめきを添えています。

そのおかげか、話そのものも、どこかおとぎ話のような趣をたたえているような。

アヤンナの一人称による語りという形式も、その趣に貢献しているようです。

読み終えて、まさなタイトル通りの物語だったなあと、吐息をつきました。
哀しいけれど、せつなくて苦しいけれど、前向きな終わり方が、余韻があってよかったです。

というわけで、わたしはこの話をおとぎ話として読みました。

あくまで私見ですが、ファンタジーというには、まとまりがなめらかできれいにすぎるかな。
さらにいうなら死生観が物足りない。
ひとびとの精神生活がよくわからない。
あえてインカを舞台にした意味はそれほどないような気がしました。

もちろん、わたしがファンタジーであると思うかどうかは作品の面白さとはまったく関係のない、べつのことなので、わたしはこの物語をとても楽しみました。

とくに、ちりばめられた挿話がすてきで、それが物語そのものに深く貢献しているという形式にも憧れます。

すてきな作品を紹介くださった某様に感謝です。

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