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『図書館の魔女』上下巻

図書館の魔女(上)
高田 大介
4062182025


莫大な叡知の力を持って世界に影響を与える図書館。そのあるじで抜きんでた知力の持ち主である少女と随身となった少年が、国内外の政治闘争の関わる陰謀と立ち向かい、仲間と共に窮地を切り抜けてゆく姿を描く、波乱万丈のミステリ冒険小説。

山奥の村で師匠について暮らしていた少年キリヒトは、時が至り外界へ、東大陸の大国・一ノ谷の都にある高い塔へと誘われた。高い塔は古今東の莫大な叡知をあつめた由緒ある図書館で、一ノ谷の政を操るとまで囁かれる影の実力者である。
そのあるじマツリカはまだ年端のゆかぬ少女であり、自らの声をもたない。
マツリカの手話通訳者となったキリヒトは、魔女と恐れられるマツリカの異能とすらおもわせる才能を目の当たりにして驚くまもなく、西の強国・ニザマ帝国の宰相ミツクビの突然の訪問に立ちあうことになった。



たいへん、面白かったです。
異世界を舞台に国際情勢を背景にしかけられる陰謀を、情報と知力を持って暴き、切り抜けていくさまにドキドキする、政治闘争と謎解きと冒険活劇とが同時に楽しめる、上質の娯楽作品でした。

ヒロインのマツリカの傲岸不遜で愛らしいツンデレだけでなく、脇を固める女性司書ふたりの個性豊かで自立した凛々しさ、元老院で暗躍する貴族議員のぬかりなさ、敵国の宦官宰相のそこしれぬ不気味さ、途中から配下に加わる元近衛の若者たちの彩り豊かなにぎやかさ、そしてもちろん主人公の少年キリヒトの、純朴ながらなぞめいた存在感と、キャラクターも多士済々。

前半の舞台となる図書館の威厳あふれるたたずまいには、本好き、図書館好きのこころが大きく揺さぶられました。

この物語において図書館とはたんなる本の保管所ではありません。
古今東西の知識を営々と収拾しつづけてきた、文字通り人類の叡知の歴史そのものなのです。
図書館で見知らぬ知識と出会ったひとは、世界のひろさをかいま見ます。
図書館は世界へとひとの意識をひらいていく窓なのです。

山奥の村でひっそりと暮らしてきたキリヒトも、図書館で大きく目を開かれます。

蓄積された膨大な情報を、生きた知識として駆使するための仕組みを整えるために奔走する司書たちの仕事が描かれているシーンは、とてもリアル。
まるで自分自身が索引付きの図書館であるようなマツリカの頭脳のすごさには息を呑みます。

膨大な情報を覚えているだけでもすごいのに、どの文献がどこにつながってるか、物理的な文献ならばいちいちひらいて確かめたり、インデックスをたどったりして確かめなければならないような、ひとつひとつの情報のつながりを、脳の中で一瞬に参照してしまうのです。

これって、まるでリンク付きのデータベースアーカイブを脳内に持ってるようなものですよ。すごーい!

それだけでなく、情報の中から重要な物を見極めてそれを結びつけてゆく、その洞察の力もすごいです。

かくて、マツリカはひとには一見無意味だと思われる言葉や、物事を発端に、とんでもない背景をあぶりだし、結論をみつけだします。

この過程がとてもスリリング。
この部分はたいそうミステリだなーと思います。

マツリカの性格や口ぶりやふるまいは、『GOSICK』のヴィクトリカを彷彿とさせます。
塔の図書館のてっぺんに鎮座していることや悪癖を正そうともしないところも含めてねw

物語がすすむにつれて、マツリカは図書館を出てそとの世界に実際に触れてゆくことになりますが、知識としてしっていた事物をその目で見、耳で聞いて、肌で触れて、そのことがマツリカにもたらしていく変化も、読んでいて楽しいものでした。

敵国ニザマとの対決がメインになる後半は、冒険活劇の割合が倍増し。
背筋の凍るような罠のなかに踏み込んでいくシーンや手に汗握る脱出劇や、劇的な真相の解明やで、ぐんぐんスピード感も増していきます。

前半は物語世界の説明、後半は実践、みたいな感じでしょうか。

不安定な国際情勢を演出する国家や民族には、それとわかるモデルがありますが、それがたんなるモデルにとどまらず、物語の展開に大きく関わる特色を提供しているあたりも素敵でした。

一ノ谷はビザンツおよびオスマントルコ、ニザマは清、アルデシュは東欧かなー、古アルデシュはなんとなくハンガリーな感じがします。

マツリカが叙事詩を愛する島嶼地方はギリシャかしらん。

それぞれの文化風俗、なによりも話す言語の特徴が作品世界の隅々にまで行き渡って、広さと深さを感じさせてくれるのですよね。

言葉に関する様々な考察も、たいへん興味深かったです。

いろんな面白さがつまった、いろんな読み方のできる、緻密で重厚なのに遊びやかろみも備えている、分厚い本をたっぷり楽しみました。

マツリカとキリヒトの、言葉にはしない、できない、微妙ないろいろを含んだ主従関係もたのしかったです。

いやー、このふたりすごく可愛いんですよ。
読んでいてによによしましたが、すごく切ないシーンもいくつもあって、もうもう、じたばたごろごろしてしまいました。はーwww

図書館の魔女(下)
高田 大介
4062182033

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