覆面作家企画6 Fブロック感想

覆面作家企画6、Fブロックの感想です。

読んだ後すぐに書くつもりだったのに、つい作者さんを知りたくなってあちこちサイトにお邪魔したりして、そこで素敵な作品を発見して読みふけったりしてたもので、感想がすっかり遅れてしまいました、申し訳ありません。

このブロックでお知り合いなのは、天菜 真祭さんとあまねさん、といっても作風を把握しているかというと自信がなかったりするおふたりですので、頑張りますとしか言えなかったりする……。
とにかく、頑張ります。


F01 アイ・アム・ファイヤーマン!

高校生とあやかしの異種交流コメディー。

かわいい、かわいいよ、火の玉!
いや、火の玉って名前じゃないんだろうけどもね、ちっちゃい番犬みたいで、蛍様のためにひたすら一生懸命で無邪気で言動がかわいいんです。見当違いの方向につっぱしってはた迷惑なんだけど憎めない。

憎めないといえば、主人公君も消防士を目指してるからってだけで、これだけ熱くなれる性格、可愛いです。

全編賑やかで楽しく、テンポのよいコメディーでした。
日野・男という呼び方には吹きました。実にありがちなんだけど。
水野美琴は、そのまんま水の巫かあ。
この短絡的な理解が火の玉ちゃんの可愛さを増してますね←そうなの?

解決の仕方も話にふさわしいシンプルさ、なのに彼女は覚えているのかなーと余韻を残しての終わりが心憎いです。


F02 命がけの結婚

滅んだ国と滅ぼした国、二つの国のシステムの受け渡し間に生じる、人間関係の悲劇をほのぼの風味で描いたお話。

命がけって二つの意味があったんですね。

冒頭でこれはコメディーなんだ! と印象づけられたので、あとからわかってくるシリアスなこれまでの経緯に驚きました。

シチュエーションの唐突さとその無理が生むギャップの笑いと、物語背景の深刻さ、少ない紙幅でこれを両立させるのは少し難しかったのかなーと思われるところもあるのですが、やはり深刻シーンの後にほっこりさせてもらえるとほっとする。ぜいたくな読み手です。

しかし、こんなに有能そうな宰相なのになんでいきなり結婚、初夜に飛んでいくのか。
そこが可笑しいところなのですが、だめじゃん宰相……笑


F03 僕も愛しているよ

魔物退治をなりわいとする孤独な若者二人の交流を描く異世界ファンタジー。

故郷を飛びだして剣士になった主人公と、女のように美しい魔術師の出会う冒頭、次々とあがる紫の火柱で魔物を倒していく魔術師の印象が強烈です。

性別詐称を早々に見抜かれる主人公のシーンを読んだ時には、まさかこれが後々効いてくるとは思いませんでした。

読んでいて脳裏に浮かぶのは、魔物の侵攻によって生活圏を脅かされている人間たちと、剣客や魔術師が魔物を追いかけて漂流者のように大森林の中をさまよっている姿。

ただひたすら、魔物退治を繰り返す若者ふたりの旅は生活感がなくふわふわとして、まるでおとぎ話のようです。

だからなのか、魔術師の背景がわかったときもぼんやりと、ああそうだったんだ、と納得してしまいましたが。
よく考えて見るとこれは、せつないラストですねえ←読みながら考えろw

欲張りな読み手としては、主人公が剣士になろうとした動機をもっと具体的に知りたかったかな。
周囲の反対を振り切ってしまうほど強い動機なのだから、主人公の行動原理に大きく影響するだろうと思います。

作者さんはラノベをお好きで読み慣れている方かなあ……。


F04 「幸福な食卓」

偉大な魔術師と不肖の弟子の、ほのぼの疑似家族物語。

技術と力にすぐれた天才型の人間が、常識やら性格やらが破綻しているのはお約束ですねw
そして不出来な弟子でも溺愛してしまうのも、ツンデレしてしまうのもお約束w

ツンデレ万歳! な私には、たまらないお話でした。

たまらないといえば、弟子の作る料理がすごく美味しそうで。
モウ乳とかホーホー鳥とかのネーミングにくすくす。ユーモアあるなあ。

魔法を使っていようがいまいが、美味しいものを食べれば幸せになれるのです。
その上なおかつ、幸せ保証付きのお店ならきっと繁盛するでしょう。
さすがに超不味いものや毒を食べさせられるのは嫌ですが、お弟子さんは善意の人みたいだしお師匠もついてることだし大丈夫、ですよね。

最後に出されたスープがどんな味だったのか、知ってるような知らないようなで終わるのもよかったです。


F05 火と水の婚姻

名前から中華風の異世界……なのかなあと思いつつ、衣食住は平安朝ぽいのかなあ。

とても純粋でかわいらしい女の子と彼女をつよく愛し大切に慈しむ婚約者のお話。
端正な文章でこまやかにつづられる背景と情感が印象に残る、そこかしこに微熱を、クライマックスでは熱情を感じてしまいました。
若さゆえの青臭さやいじらしさ、不器用さが、読んでいてとても愛らしかったです。

在景くんの遠大な洗脳計画に、思わず笑ってしまいました。
この世界、文化はかなり進んでいそうです。清司は乱読者なのでしょう。男なら物語だけ読んでいるわけではないよね。本は写本なのか刊本なのかを知りたかったなあ。←話には全く関係ない欲望。


F06 夕星☆えとらんぜ

爽やかイケメン君の正体にビックリしながらも、悪気無く爽やかで居続けるそのキャラクターに感心してしまいました。
おかげで最後まで爽やか青春SF?として読めました。
人類とエイリアンとの奇跡的な接近遭遇なのに、チョウチンアンコウが即座に通じるところ、なんとなくツボりました。

このお話を書かれた方がどなたかはまったくわからないんですけど、「○○だけど」「○○してるけど」という表現がかなり出てくるのが気になりました。こんなフェイクの仕方はないと思うから、きっと癖なんだろうと思うのですが。


F07 火のないところに煙をたてるお仕事です。

高校生活でのいじめのお話。
これ、心理サスペンスですよね。女の子グループの会話がすでに怖いです。
こうして同性をおとしめるような行為をする人たちは、社会的な歪みで傷つけられた、心の傷が癒えていない人たちなのだそうですが、自分のしてることを客観視できないのは病んでるからなんですね。

そんな彼女たちの標的にされてる理沙を、さりげなく守るヒロイン……。
あれあれあれ、どんどん怖くなってってるんですけど……うひゃあ。

やっぱりそうだったのか、と思ってしまうんだけど、タイトルがこれでしたから。
でも、お仕事といういいかたが、すごく怖いです。
生き甲斐とか、楽しみ、をとおりこして、生きるためにやってるような、レベルの違いを感じてしまいました。

このお話を書いた方は、きっと人物同士の関係性とか心理描写をたくさん書いてるかたなのではと思います。


F08 凱旋の火矢は墜されたし

第二次大戦後に東欧、じゃなかった中欧か、に襲いかかってきた東からの暴力的な嵐、それによる政治の混乱。
乱れきった治安の中、兄に託された赤子を抱いて決死の逃避行をした女性の、数十年後の回顧録でした。

具体的な情報の多い、歴史の重厚さを感じさせる話でありながら、女性の語り口がとても繊細でやわらかく、隅々までこめられた感情が読むそばからあふれでてきそう。

とても個性的で、他人の真似できない作風をお持ちの書き手さんだなーと、感嘆しました。
素敵です、うっとり………。

まだ一文が続きそうなところで、あえて句点を打ち、そのまま続ける表現が一番印象に残りましたが、そんな細かいところを見なくても、全体からあふれでる雰囲気が独特で、これをわざわざフェイクして出そうとしても無理でしょう、作者さんをしっている人ならすぐに当てられそうだと思いました。 

で、ほんのちょっと推理期間前にお邪魔したばかりの私が言うのはあれなんですが、でもこの方しかいらっしゃらないのではと思います。篠崎琴子さん。すみませんすみません。


F09 千匹皮姫

大学の演劇サークルの春公演の準備を前にしてのどたばたと、演技によって生まれる異空間を並行して描く、マジックリアリズムっぽいお話。

冒頭のシナリオを読んで、これはいったいどういうお話なんだ? 王様が娘に求婚?? 千匹皮のローブ??? てなったんで、そのままのお話じゃなくてよかったって思いました。

先輩たちがごそっと抜けたおかげで人材が不足し資金も不足し、なにもかもうまくゆかず、妥協ばかりを繰り返す仲間たちに苛々苛々しているゆめちーさんに(名前が似てるから)同情。

演じる劇の登場人物が勝手に立ちあがって、その感情に演じ手がふりまわされるという展開、なんとなく、小説を書いてる時にキャラクターが勝手に動きだしてしまう感覚に近いのかなと思いました。

しかし、劇とは直接つながりがないはずの現実に王様が干渉したところには驚きましたね。
この場合は、それで助かって、ゆめちーさんの煩悶にもケリがつき、めでたしめでたしとなったわけですが、ひゃー、びっくりしたあ。

現実も演劇という非現実を造り出す人たちの舞台裏ということで、ふつうの日常からは少し浮いているし、非現実の演劇が現実に干渉したりと、現実と非現実の境目があやふやになる、不思議な味わいのあるお話でした。

気の置けない仲間同士のセリフはざっくばらんでカジュアルだけど、地の文は硬質で歴史物でも通用しそうな達者、この話の作者さんは何でも書けそうな気配がします。

印象だけですが、これはあまねさんのような気がします。文章も、題材も。しかし、あまねさんは変幻自在という噂なので……自信はないです。


F10 灯油あります。

家業はてっきりガソリンスタンドなのだと思い込んで読んでいたところ、外見がお化け屋敷っぽいだの喫茶店に見えるだのというので、おや? と思い、読んでいくうちに、ふおおお、これは凄い、面白い、となりました。

いやー、人魂って存在するのに燃料が要るんですね、知らなかった!
人魂をお客様と呼び、古い方々と呼ぶセンスが上品で可愛くて楽しかったです。
給油するシーンは目に見えるようだし、それを現実には見えないという事実を理系の志織ちゃんというリアリストの存在によってさらに強調するあたり、うまいぐあいに書かれているな〜。

危険物取り扱い主任者資格の科学の問題など、わたしには魔法の呪文のようで何が何やらさっぱりでしたが、これを平然と扱っている作者さんは現役の学生さんなのか。でも、しっかりとした文章からはやはり、成人されて久しいような気がするので、理系に強い方なのだろうと推察いたします。

それと女の子の、自分に気合いを入れながらの独り言みたいな愛らしい語り口。
これは天菜 真祭さんのお作じゃないかと思います。違ってたらごめんなさい。


F11 愛の消火大作戦

直球の青春恋愛ストーリー、楽しかったです。
全然意識してなかった幼なじみを語る、じつに正直かつ自己中心的傍若無人なセリフが、いかにも男子高校生って感じで可笑しい。
一週間のうち半分もお邪魔しておいて、夕飯をご馳走になっておいて、何を言ってるんだこいつ。
そのレベルのつきあいを今までずっと続けてこられたというところからして、すでに普通じゃないと思うんだけど、無自覚にも程がありますよね。

で、案の定、彼女を意識しだした途端に……でありました。

このお話の楽しいところは、主役の鈍感さを際立たせる脇役の変人・戸川くんの存在でしょう。
クールに暴言を吐きつづける戸川くん、将棋盤の上でひとりオセロをする戸川くん。
キテレツグッズは、本当はいったい何だったのでしょう。そして戸川くんは何を期待していたのでしょう?

すごく、気になりますw

で、この戸川くん、すずさんのサイトでお見かけした委員長くんに似ているような気がしたのですが……。
どうなんでしょうか。


というわけで、感想は終わり。
推理は、各作品の感想に書いた以外のことはすみません、わかりませんです。

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