『移動都市』

移動都市
フィリップ・リーヴ 安野 玲
4488723012

[Amazon][bk1]


読了。
「六十分戦争」のために荒廃した地球を舞台にした、少年少女の冒険SF。
都市が移動しながら放浪して、おたがいに喰らいあう、というユニークな設定が面白い。しかしもっとすばらしいのは微妙な風の具合や高低差、スピード感までをあますところなく伝えてくれる、文章だと思います。こんなに簡単に、クリアーに動く映像が細部まできっちりと浮かんでくる、目の前にあらわれる文章を読むのは初めてです。とにかく視覚的。文字を読んでいる感覚が消えました。著者はもともとイラストレーターであったそうですが、なるほどなあ。

というわけで、文章が喚起する映像にすっかり魅せられてしまった私。最初のうちはゆっくりとディテールを楽しみながら読んでいたんだど、中盤から手放せなくなって一気読みしてしまいました。展開もスピーディーで波瀾万丈でスペクタクル! 考えてみればかなりハードな結末ですけど湿度がないので読後感は晴れた空のようでした。

世界観も相まって、まるで宮崎アニメを見ているみたいだったなと。ナウシカとかラピュタのあたりの。
うんそう、アニメなんですよ。ディテールまで神経の行きとどいた丁寧なアニメ。だから手触りはあんまり感じない。そして、視点も高くも低くも近づきもしない。変化するのはカメラワーク。レイアウト。そして、この画面には感情の色が付いていない感じ。このすこし乾いた距離感がアニメっぽいかなあと感じるんだと思う。しかしたいそう上質のアニメです。直接的には表現されていないけれど、読み手に経験があればあるほど訴えかけてくる感触や感情はたっぷりです。どのキャラクターも生き生きしていて、でも必要以上には描き込まれていない。どのシーンもディテールが濃いのにこの一冊でおさまっているのは、必要なシーンだけを厳選しているからだなと思いました。うーん、すごいな。勉強になるなあ……。

とりあえず、面白かった!と叫んでおきます。
そして史学士のポムロイ先生、大好きー!とも。史学ギルドのファンになっちゃいましたわ。
このシリーズ、四部作だそうでつづきはこの巻の二年後から始まるそうです。また史学ギルドが出てきてくれると嬉しいんですが……むりだろなあ……。

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)