『蒲公英草紙 常野物語』

蒲公英草紙 常野物語 (常野物語)
恩田 陸
4087747700

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読了。

不思議な力を持ちながらけして集まらず、めだたず、力を求めずにながれていく常野一族を描いたシリーズ。
第一作『光の帝国』は短編集でしたが、今回は長編。
短篇に出てきた光比古くんたち一家がからんできます。

この著者の魅力は読み手が自分を意識せずに物語と同化できるような描写力、だと私は思っているのですが、今回もそれに違わず。

舞台は日清戦争後の日本。
世の中の流れがひとびとの未知の方向へとすすんでいく不安感が全体を覆っている状況がとてもよくつたわってくるのとどうじに、地元の名家の家に病弱な末娘の遊び相手として通うようになったヒロインが体験する新たな世界、輝くような季節と不可思議な出来事、のちにいくども思い返す宝物のような記憶があたかも自分が体験しているかのようにこころにしみこんでいくのです。

読み終えた時には細部がおもいだせないほど、のめり込んで読んでしまいましたが、こういう読書は久しぶりでした。
日本語の文章のもつちからをあらためて思いしった次第。

しかし、物語自体がその――な予感に満ちているうえに、語り手の現状が戻ってきたラストで私は呆然としてしまいました。
こんなとこで終わるんですか、と。
私も光比古くんにあって訊ねたいです。つーか、訊ねるところまで書いてくれればいいのにと思いました。

文中に日本画と西洋画の違いをかたるシーンが出てきますが、この終わり方は日本画のそれなのでしょうか。
おもしろかったんですが、釈然としない読後感でした。
まちがいなく尾をひいてます。

シリーズの第一作。
光の帝国 常野物語 (集英社文庫)
恩田 陸
4087472426


常野シリーズ第三作。『蒲公英草紙』のつづきではなく常野一族のべつの人物がでているらしい。
エンド・ゲーム 常野物語 (常野物語)
恩田 陸
4087747913

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