『ぐるりのこと』

ぐるりのこと (新潮文庫 な 37-8)
梨木 香歩
4101253382

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読了。
「考える人」2002年夏号~2004年秋号に掲載されたエッセイ集。

以前、『春になったら苺を摘みに』を読んだ時にも感じたことですが、梨木さんはとても敏感で傷つきやすい人で、それでも痛みをうけとめて逃げ出さず、懸命に現実に向かって意識を開いていこうとする人なんですね。

異なる文化を背景にした人とのつきあい方や同時多発テロや少年による幼児殺害事件などについて、もんもんとおもいをめぐらせている彼女を、強い人だなあと思うと同時に痛々しいなと感じるところと凄いなと尊敬するところと、とにかく私にとってはあまり冷静に読めないのが梨木さんのエッセイ集です。

なんというか、痛いと感じるところがとてもよく似ていると同時にそれについて感じることもかなり似てるんですよね。
でも、梨木さんは私がうやむやにして逃げてしまうところで踏みとどまって、痛みを分析しながら考え続けている。
共感するところと、私にはとてもできないところとがないまぜで、読んでいるととても哀しくなってくる。

でもそれだけでなくて、同時に織り込まれた周囲の自然の描写や殺伐とした社会で出逢う温かみなどがささやかな希望として感じられるのがとても嬉しくて、そういったいろいろなことどこもがすべて等価値を持って記されているところも好きなんです。

そして、使い回されてすれきれそうな日本語が、彼女の感性をとおしてみずみずしさを取り戻しているようなところも好きです。

つるつると読める読める簡単な文章にはない、思慮深さをかんじる。

そうして読み終えた時には、今という時に傷つけられながらも前向きに生きてゆこうとする梨木さんの姿勢に、すこし勇気づけられているのでした。

収録されたエッセイには、取材でトルコを訪問した時のこと、菌類のことについて取材をした時のこと、がふくまれています。


向こう側とこちら側
そしてどちらでもない場所
境界を行き来する
隠れたい場所
風の巡る場所
大地へ
目的に向かう
群れの境界から
物語を



ちなみに私が読んだのは文庫ではなく、単行本でした。
ぐるりのこと
梨木 香歩
4104299049


トルコが舞台のお話。
村田エフェンディ滞土録 (角川文庫 な 48-1)
梨木 香歩
4043853017


菌類の話。
沼地のある森を抜けて
梨木 香歩
4104299057


前半を読んでいる間中私が思い出していたマンガ。
鎖衣カドルト (WINGS COMICS)
吟 鳥子
4403618839

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