『血と砂 上 愛と死のアラビア』

血と砂 上―愛と死のアラビア (1)
ローズマリ・サトクリフ 山本 史郎
4562040521

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読了。

オスマン帝国末期に、イギリスのスコットランド連隊の一員としてエジプトに従軍、しかし作戦の失敗により捕虜となった青年トマスが、異国の地でとまどいながらも友と出会い異なる教えを受け入れて人生を歩んでゆく物語。

サトクリフの作品としては大人向けのほうにはいるのかな。
陰謀や血なまぐさい暴力などはこれまでもありましたが、戦でないのにここまで凄惨な戦闘シーンはなかったと思うし、後宮のお姫様とのあやしげなかけひきや罠はいままで読んだこと無かったと思う。

特に太守のお姫様ナイリの、利己的で刹那的で状況を弄ぶようなキャラクターは新鮮でしたねー。
いつものサトクリフの作品には出てこないタイプだった。

それと、太守の次男のトゥスンとの友情もこれまでにないパターンだった気が。
中東の人の激しやすいといわれる性質がどれほどほんとのことなのかは私はわかりませんが、この熱さ、激しさは、友情と言うよりも恋とか愛とかみたいだと思った。

いっけん、アラブを舞台にした話に期待されるあれやこれやがサービスされた作品であるかに見えて、もしかしたら作者本人がそういう物語が書きたかったからこの舞台を選んだのかと思われたり。
現にかなり細かいところまでしらべて書いたんだなあということもつたわってきます。
トルコで奴隷軍人のマムルークたちがどんどんお荷物になっていった状況なんかが、なんだかよくわかったような。もともと出身地はバラバラであるはずのマムルークをマムルーク人と訳すのはどうかとおもうんだけれども。

それにしてもサトクリフは舞台となったカイロやアスワンに行ったのでしょうか。
情景を丁寧に描いて登場人物の心中を暗示する寡黙な作風はかわらず、中東を舞台にした物語のたたずまいにもいつもの威厳がみちています。

ただ、この時代のくだった物語にその威厳はすこうし浮いているような気がするんですよね。叙事詩だと重すぎるというか。
なぜか、古い時代の人間は大きく書かれても違和感がないのに、時代が現代に迫るほど小さく人間を書いたほうがリアリティーを感じるのは、私が昔の人間に神話伝説みたいなものを重ねているからなのだろうかなあ……。
それとも抑制のきいた表現が、トゥスンたちの熱情を異質なものと思わせるからなのか。
うーん。わからん。


なんだかとりとめない感想ですが、ナポレオンが生きているというので時代的にはちょっと違うかなとおもうけれども、映像的にはアラビアのロレンスにオーバーラップさせると読みやすいかなと思います。

読みながら、トゥスンの父親ムハンマド・アリーってたしかムハンマド・アリー朝をたてた人物じゃないかなーと思いつづけていたのですが……うわーもうぜんぜん覚えてないよ……。

先が読めないのは本を読む上ではいいことじゃないかと言い聞かせつつ、下巻に進みます(汗。

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