『銀の犬』

銀の犬
光原 百合
4758410690

[Amazon]

読了。

ケルトの伝説・神話をモチーフに描かれた、連作短編集。

これはたいそうな掘り出し物でした。なんの予備知識も持たずに好みの本に出会えると「うわあ、これは当たった!」と思うのですが、今回のは弾丸ライナーでのフェンス上部直撃スリーベースヒットくらいの当たりでした。うれしいー。

この作者さんはミステリを一冊読んだことがあるのですが、そのときにはやわらかでやさしすぎて、ちょっと食い足りないなあ、という感想でした。
図書館で手に取ったのはホントに偶然。装丁にひかれて、中身をバラバラと見たらケルト系の名前がじゃかじゃか出てきて、最後のほうには「ディアドラ」とか「フィン」とかを発見。
これは借りねばなるまい、ともう一冊借りようと思って手に持っていた本を書架に戻してカウンターに向かったのでした。

その決断に誤りはなかったです。
ミステリでは物足りなかった優しさが、ファンタジーの美しさはかなさと調和して、とても素敵な物語になっています。

話の主軸はこの世ならぬものとの邂逅そこに生じる現実とのトラブル。
伝説ではおもに悲劇的におわるエピソードですが、声を失った祓いの楽人オシアンとかれの相棒兼通訳の少年ブランが丸く収めてゆくという枠が、伝説の残酷さをやわらげてせつなくいとおしい読後感に繋がってます。

収録作品は以下の通り、デス。


第1話 声なき楽人(バルド)
第2話 恋を歌うもの
第3話 水底の街
第4話 銀の犬
第5話 三つの星

あとがき



最後の「三つの星」は、元ネタの理不尽さと不可解さがかなり緩和されて、ずいぶんとすっきりと感情移入しやすい話になってました。べつの話と言ってもいいくらい改変されていたけど(笑。
ミステリも書いてる作家さんだからかな、内容がかなり明解で整理されてるので読みやすい。

文章はやさしくやわらかく、ファンタジーの醍醐味である美しい言葉遣いがたいそう嬉しい。
シリーズキャラクターがかなり立っていて、かれらの描き方も文章と雰囲気を損なわない程度にくだけているので、どっぷりのファンタジーファンでなくても苦労せず読めそう。

というか、装画を変えたらラノベとしてもいけるのではないかしらんと読みながら思いました。
なかの、ラナン・シーとケルピーの息子であるガンコナーの話(恋を歌うもの)などは、規制がかかるかもですが、『伯爵と妖精』あたりが読める人ならすらすらと読めるんじゃないかなあ。

読みやすくうつくしく幻想的。
ケルト系ファンタジー初心者にも、ふつうのファンタジー好きさんにもお勧めしたい一冊です。

オシアンとブラン(それにヒューも?)の出てくる話はまだまだ構想があるそうなので、ぜひぜひ続きも出して欲しいです。

ところで。
巻末の参考文献に『クリスタル・ドラゴン』だの『指輪物語』だの『妖精国の騎士』がある本を初めてみましたよ(笑。

すっかり気に入ってしまったので、他の本も探してみました。
星月夜の夢がたり (文春文庫 み 34-1)
光原 百合 鯰江 光二
4167717344

うーん、このあたりかな?

参考文献に出ていた「クリ・ドラ」。
クリスタル・ドラゴン 24
あしべ ゆうほ
425309550X

12月に新刊が出るらしい。

妖精国の騎士Ballad (プリンセスコミックス)
中山 星香
4253193552

いつのまにか完結していた。

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)