『驚異の発明家(エンヂニア)の形見函』

驚異の発明家(エンヂニア)の形見函 (海外文学セレクション)
アレン カーズワイル Allen Kurzweil 大島 豊
4488016359

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ようやく読了。

18世紀末のヨーロッパ。
不幸な出来事から荘園主にその才能を見いだされた少年の、奇妙な修行・遍歴時代とその結果としておとずれた発明家(エンジニア)としての自動人形の研究に対するあくなき情熱、そしてその完成と幸福。さらにそののちのものがたり。

形見函というのはある人物の一生を記録にとどめるもの、だそうです。函のなかの品物は組み立てた人物の人生に深く関わりがあったり決定的な出来事を象徴するもの。
この話は、オークションでひとつの形見函を手に入れた人物が、天才的な発明家の人生を追いかけて伝記としてものした、という体裁になっています。

全体的の構成は中世の遍歴職人の話みたいです。
ただ、主人公クロード・パージュは自分がなにの修行をしているのかわからずにいるのが普通と違う。
このはなしがときに幻想的な奇想天外な雰囲気をもつのは、尊師の人物像が謎めいているのと、クロードに尊師が求めているものがキリスト教から見ると異端であるらしいということ、そのうえにあまり現実的ではないように感じられるからでしょうか。

19世紀よりは中世に近く、しかし中世よりは確実に技術的に進歩し、建て前が崩れかけている18世紀ヨーロッパの混沌とした状況が、行間にぷんぷんとにおうような描写がステキです。

登場人物も個性派ばかりで、感情移入を誘うというよりもそれぞれの姿とやりとりを外から楽しむといった描き方をされています。

途中、書店で徒弟をすることになったクロードが出逢う、かつてのあこがれの婦人ユゴン夫人などはまったくさっぱりなんなのこの人、と読みながら思っていましたが、のちにおもわぬところで謎がとけた時には、ううむそうだったかと唸りました。

全体的に、怒濤の展開というよりあちこちにちりばめられた作者の企みを楽しみながら距離を置いて愉しむ本だったようにおもいます。

終わり方がえらく淡々としてまして、それがこの話には合っているんだろうなと思いつつ、ちと物足りないような気もいたしました。

私が読んだのはハードカバーですが、すでに文庫化されてます。

驚異の発明家の形見函 上 (1) (創元推理文庫 F カ 1-1)
アレン・カーズワイル 大島 豊
4488519024


驚異の発明家(エンヂニア)の形見函 (下) (創元推理文庫 (Fカ1-2))
アレン・カーズワイル
4488519032


さらに、本作と密接に関係のある第二作も翻訳されている模様。

形見函と王妃の時計
アレン・カーズワイル 大島 豊
4488016405

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