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『瞳の中の大河』

瞳の中の大河
沢村 凛
4103841044


[Amazon]

読了。

野賊との内乱状態にある異世界の一国を舞台に、軍人としての強い信念を持ちつづけのちに英雄とたたえられた男の生涯をつづる。

同著者の新刊に興味を持って、しかし図書館には見あたらなかったためとりあえず書架にあった既刊を借りてみました。

冒頭、ひげそり三連発にかなりびびりましたが、ページを追うに連れてだんだんと面白くなって、最後のほうは一気読み。

読み終えて感じたのはたいへんに力強い物語であるなということ。文章はどちらかというとぶっきらぼうで、情景描写も余韻もあまりそんざいせず心理説明もなく、それぞれにエネルギーを秘めた人間たちの行動をひたすらに追いかけていくような感じ。
展開も情け容赦なく、かなり殺伐としています。が、描写があっさりとしているので嫌悪感は遠く、濃密な時間の中展開されるエピソードからおもわずあふれ出る切迫した感情が読み手に印象を残す話です。

登場人物にある程度距離を置いた書き方がされていてもそれほど感情移入が難しいとも思いませんでしたが、さいごまで主人公のアマヨク・テミズ大佐はちょっと謎でした。
しかし、さいごにかれの内面や彼の父親のことを推理しておわるのは、なんとなく蛇足というか、ミステリぽくて違和感がありました。ここまで心理説明をしてこなかったのだから、最後までしなくてもよかろうに、という気分。

ここからさきは異世界話についての個人的な好みの話です。



えーと、この話、とても面白かったのですが、異世界ものである理由がたんに地理的というか地勢的なものであるように思えて、その点がちともの足らなかったです。

固有名詞やなにやかやは西洋風の異世界ものとも異なっていたので、なにかあらたな世界が開けてくるのかなと期待していたのですが、ここに吹く風も流れる水も踏みしめる大地も、少し前の地球のものと変わらない気がしました。というか、そんな描写がそもそもなかった(汗。

なによりここがなーと不満だったのが、この世界のひとびとの精神世界がちっともわからないところでして、山脈と川とで周囲から隔絶された山国で内乱を続けていても他国からの侵略には一丸となって反撃する、という設定を精神的に支える柱が見あたらない。
ようするに、神話とか伝説の楽園とか、絶望している民が自分たちの望みを仮託するようなものがどこにもないのですよね。
野賊たちの活動理念もシンボルとなるようなおおきな目印がないので、なんとなく弱々しいというか。
評議員の傀儡と化している王様がいるからには、なにかがあるはずだと思いつつ読んでいたのですが、最後までそんな話はでてこなかった。

つねづね、冒頭に神様の話がでんと据えられている話は興ざめだと思っておりましたが、ここまでなにもないとなんだかものすごく物語世界が空虚に感じられるのですねえ……。

それと、こういう宗教的になんにもない話は日本人だから書けるのかも、たぶん欧米人には書けないんじゃないかな、とも思いました。
翻訳物だとふつうの現代ミステリを読んでいたって信仰アイテムがたくさん登場しますからねえ……。
でも、日本人だって無意識にいろんな宗教を実践してるんですけどね。日本人って無頓着という信仰を持っているみたいだわ。


最初に興味を持ったのはこちらの本。
図書館には入っているかしら……年末年始にデータベースを入れ替えているとかでまだわかりません。

黄金の王白銀の王
沢村 凛
4344013980


Comment

異世界

こんにちは、あけましておめでとうございます。
確かに、沢村さんの本では宗教観が感じられませんねー。他のところがとっても骨太なので、私は違和感は感じずのめりこんで読んでしまうのですが……。
「黄金の王白銀の王」でも、そういう感じはいっそうましていると思いますが、(^^;)でも人間ドラマは非常に面白いのでおすすめです!

おむらよしえさん、あけましておめでとうございます。

宗教というと大げさかもしれないけど、ようするに死生観ですよね。私自身にはまったく信仰心はないのに、なぜかこだわってしまうところです。

でもそのほかの部分はたいそう楽しみましたので、多分この次は慣れてふつうに楽しめると思います。
図書館に入っているといいなあv

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