『オーバーン城の夏 下』

オーバーン城の夏 下 (3) (小学館ルルル文庫 シ 1-2)
シャロン・シン 東川 えり
4094520457

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読了。

面白かったです。
上巻の感想にはいろいろと書いたけど、最終的にはこころよい読後感に満たされて終わりを迎えました。
この本の雰囲気は、昔の「若い女性をターゲットとして立ち上げられたばかり」のハヤカワ文庫FTのものとよく似ていると思います。
あのころのマキリップやリーの力作と同列に並んでいたらちょっと落ちるかなと思いますが、リーのジュブナイルとおなじくらいの優しさに満ちたロマンティックなファンタジーだと思う。
あと、話の構造としてはいろいろな事が進行したクライマックスに事件が発生する、何故、どうして、だれが、というミステリ的な要素もある話でした。

というわけで、今のラノベのレベルとは比べものにならないほどその方面の描写は健全です。
しかもヒロインのコリーがとってもおニブさんなので、相手役の青年が気の毒なほどです。
魔法で周囲が見えるようになったといっても、まだまだ人の心の機微をすくいとるほどまでには至ってないんだよねえ。
エリサンドラもロデリックもケントも(ブライアン王子だけは排除)、ほら、みんな瞳で語ってるじゃないの、気づけー!!
と唸りながら読んでましたよ。

それからそこはかとない色気、これがやさしげな空気の中にも漂ってます。
異界の住人アリオラたちの存在にそれが集約されている……ような。
読んでいて、これはまっとうな少女の成長物語であると同時に夢と現実が切りはなされていく物語でもあるのだなあと思いました。
アリオラ狩りの先頭に立っていたジャクソン叔父の存在は、その象徴でもあるようでした。
お伽噺の終わり、みたいな幻想的なエピソードで、なんとなくはぐらかされたような気がするかもしれませんが、私はこの終わり方は好きだと思います。

それほど傑作というわけではないけれど、じつにひさしぶりに好きな雰囲気のファンタジーを読んだなあという嬉しさが余韻となっております。
リーの『冬物語』とか『死霊の都』あたりがお好きな人にお勧めです。

オーバーン城の夏 上 (1) (小学館ルルル文庫 シ 1-1)
シャロン・シン 東川 えり
4094520384


冬物語
タニス・リー 室住 信子 森下 弓子
4150200432


死霊の都 (ハヤカワ文庫 FT 50)
タニス・リー 森下弓子
4150200505

Comment

こんばんは。あけましておめでとうございます(松の内は過ぎてしまいましたが…汗)。
この作品、気になって2度ほど手にとっていたのですが、結局そのまま戻してしまってました。
冬物語も死霊の都好きなので、読んでみようと思います。
「フレッドフォード氏のアヒル」もこちらを拝見して読んでみてとてもよかったです(^^)ご紹介ありがとうございました。

苳子さん、あけましておめでとうございます。

『冬物語』や『死霊の都』よりは少女小説よりかとも思いましたが、あのころ大好きだった雰囲気がとても似ていたので例にとらせていただきました。
楽しんでいただければ幸いです。

>『フレッドウォード氏のアヒル』

気に入っていただけて嬉しいです。あの作品はほんとに埋もれた名作ですよね。また機会があればいろいろとプッシュしてみたいと思います。

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