『優しいオオカミの雪原 下』

優しいオオカミの雪原 下 (3) (ハヤカワ文庫 NV ヘ 14-2)
ステフ・ペニー 栗原 百代
4150411646

[Amazon]

読了。

19世紀のカナダで殺人事件とともに姿を消した息子をさがして極寒の雪原を行く母親の話。

上巻の感想に書き忘れましたが、

2006年度のコスタ賞、処女長編賞、最優秀作品賞受賞作品。
英国推理作家協会賞、エリス・ピーターズ賞ノミネート作品。

という説明が載ってます。
エリス・ピーターズ賞というのは最優秀歴史ミステリに与えられるものだそうな。

ちとネタバレっぽい文章になってしまったので、たたみます。

しかし、読んでいてこれはミステリだーと思うことはあんまりなかったです。
上巻『優しいオオカミの雪原 上』よりは話に緊迫感が漂ってきましたが、話にのめり込むには私にとっては視点人物が多すぎの感じ。それぞれの都合が先走って、しかもそれがまったく事件と関わりがないことがあるため犯人捜しをしているという気分が全然しないのがなんとも。

むしろ雪原の中をなにかを求めてゆく、サバイバルの物語といったほうがしっくりくるかも。無言で心の中ではさまざまな過去のことがらを想いながら、同行者たちの交流は立場の違いからあまりにもぎこちなく言葉少なです。隔てられた魂は中々近づくことができず、寒さと痛みがわずかばかりの連帯感を生み出しても、目的地にたどり着くとあっというまに互いの考えがわからなくなる。言葉に出さなかった絆はいつの間にか無かったことになるのだろうか。

最近ラノベばかり読んでいたためか、こんなふうな「大人な」抑制された描き方がなんとなくもったいぶってるような気がして面倒でした←おいおい。

ところで、上巻の感想に「イングランド人の入植地」と書きましたが、よくよく考えてみるとこれってスコットランド人の入植地だったのかなとあとで思いました。
いちおうヒロインのロス夫人はエディンバラの出身と書かれているし、あとがきにもハイランドのことが載ってるし。
けど、するとスコットランド人もアイルランド人を差別してたってことになるので、なんだかなーなんですけどねえ。

あとはロス夫人の息子フランシスの失踪事件の背景が……。この話は昔の田舎の話だと思って読んでいたので心底どっきりしました。いや、田舎だからってこんなことはないだろうとかそういう事を言う気はないし、そこだけ取り出して読めばそれほど驚くことはないんですが、でも正直、こんな背景にする必要があったのかは疑問だし、このエピソードにも収拾がついてないのは後味が悪いです。収拾つけるには相当紙幅を費やしそうだけども。

最終的には殺人事件はいちおう解決しますが、だからって状況は変わらないじゃないですかという風なエンディングにも、大人な余韻を感じるより子供っぽく不満が先立ってしまいました。

私もいつの間にか大団円大好き人間になってしまったのね(汗。

だから大人っぽい、シビアな話が読みたい方には合うのかも。

19世紀のスコットランドについてもう少し知識があればもっと楽しめたのかもしれない、と今は思います。
アイルランドは少しは知ってるんだけど、盲点でした……。

あとはタイトルで期待したオオカミ君たちの出番があまりにもすくないので、これにもがっかり。
きっとタイトルのオオカミはロス夫人の旅の案内人パーカーのことだったんだよな、うん。
(こんなに重要なのに登場人物表に載ってないなんて、可哀想。)

というわけで、この本に関しては私の期待した方向が間違っていたということで。
歴史ミステリというにはミステリ部分が弱い気がしますが、魂の旅的歴史小説としてはけっこうおもしろかった、ような気がする。断言できないのはこれまでに書いたいろいろが理由です。

にしても、この話の時代から『夢の書』にいたるには相当な労苦と艱難辛苦と精神的な犠牲が必要そうだと感じたです。

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)