『契丹伝奇集』

契丹伝奇集
中野 美代子
4309404677

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読了。

アジアを舞台にした幻想短編集。

響子さんが読んでらっしゃるのを見て、そういえば中野美代子の小説もあったなあと借りてきました。
西域を舞台にしたもので安心して読める(基礎知識が)ものがあまりない時代、初めてであった『眠る石』という短編集はかなり印象的な本だった。
その後『カスティリオーネの庭』も読みましたが、こちらも幅広い知識と考察にうらうちされた、ただものではない歴史小説だったと記憶しております。

というわけで借りてきたのですが、ですが、
今回はずいぶんと読むのに苦戦させられました。
『眠る石』もけっこう幻想的な話だったと思うんだけど、こちらはどっぷりと夢の世界にひたっています。ともすると酩酊しているように足もとが不確かになり「ここはどこいまはいつ」状態に陥るので、こちらの意識までもが現実から足場を攫われてしまうらしく、何度読みながら眠ってしまったことか。

ストーリーラインが定かじゃないところとか、目的意識が希薄なところとか、唐突に話が終わって放り出されたような気分になるところとか、これは物語じゃなくて詩だよ、小説じゃなくて文学だよ、と想いながら必死に現実にしがみつきながら読み終えました。

あ、寝る前に布団の中で読んでたのもまずかったかなと思う。
真っ昼間だとすくなくとも居眠りだけはしなかったから。

収録作品は以下の通り。


女俑(じょよう)
耀変(ようへん)
蜃気楼三題
青海(クク・ノール)
敦煌
掌編四話
 考古奇譚,ワクワクの樹,海獣人,屍体幻想
翩篇七話
 狄,杪,膏,蝕,セン,魈,キョク

跋/文庫版あとがき

『契丹伝奇集』をめぐって(高山宏/池内紀)



難しい漢字がよく使われていてタイトルも表示できないものがいくつかありました。
こんなところにも本業は研究者である著者の教養の深さがうかがい知れます。

私が印象深く感じたのは、茶碗まつわる現在と過去を描いた「耀変」。耀変天目茶碗てどこかで見たことのある固有名詞だと思ったのですが、呻吟の末、恩田陸さんの短篇で読んだようなと思い出しました。

あとは「蜃気楼三題」の第一話。
文成公主と吐蕃の宰相ガルとのエピソードだから(苦笑。

漢字一文字タイトルの翩篇七話はすべて掌編ですが、短いがゆえに鮮烈な印象を残すものが多かったです。

それから「敦煌」。まるで欧米文学みたいな登場人物の苦悩がなんともいえなかった。
いまBSでやってる『敦煌莫高窟』を見て期待していたのとはまったく違う話だったけれども、これはこれでやっぱり文学ーという感じがしました。

総じて普段読んでる小説のレベルと比べると違いがありすぎて正直消化不良のところもありましたが、読みながら夢の中に漂っていってしまう、しかも悪夢の中に、というような本は滅多に読まないので、しばらくぶりによい体験をしたなと思います。

眠る石 (ハルキ文庫)
中野 美代子
4894563452


カスティリオーネの庭
中野 美代子
4163171703

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