『天と地の守り人 第三部』

天と地の守り人 第3部 (3) (偕成社ワンダーランド 34)
上橋 菜穂子 二木 真希子
4035403407

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読了。

しっとりとした大気と豊かな大地、気候風土から人びとの気質までを描き出して骨太の物語として編み上げた、アジア風異世界ファンタジー「守り人」シリーズの完結編。

はー、読み終えたー。
いまは感慨にふけりたい気分です。

人びとが自分たちが主役で自分たちの利益ばかりに汲々として争っているうちにも、世界はというか自然は、人間たちに関係なく生の営みをおおきなサイクルで繰り返しているんですねえ、というお話だったように思います。

異界ナユグはひとにとっては彼岸なのかと思っていたのだけど、じつはそれだけでしっかりと自立した世界であるわけだ。
ある種の並行世界なんだろうか。所々で交差しているだけで、ひとびとの精神世界とはあまり関わりがないみたいに感じられました。
でも、呪術師たちはナユグの力を利用して術を行うのだから、精神と完全に切りはなされているわけでもないのですよね。
うーむ。
ナユグに人型の生命がでてこないから、感情移入が難しいだけかな。
いずれにしろ、ナユグは信仰が廃れると異界の存続が危うくなる、というようなものではなく、もっと力強く生命力にあふれた異界なんだなということがひしひしと伝わってくる描写でした。

トロガイ師決死の大呪術のところなんか、はうーと陶酔してしまいましたよ。

いずれにしろ、ここでの異界は人間の精神よりも大自然のほうに近いのかもなーと思ったことです。人間だって大自然の一部には変わりない。

人間たちの物語――チャグムとその父親である帝や、バルサとタンダのお話は、予想の範囲内のところにおさまりましたが、予想通りとはいえ新ヨゴ皇国の帝の存在意義や信念などをすべて背負い込んだうえで生きてきた帝の心中がチャグムの視点で明らかになるあたりは、すべてを説明しない抑制のきいた文章でなにかすごくつよく心をうごかされました。

破壊と再生と一口に言うけれど、ひとつのシステムを壊して新たに作り直すには大きな犠牲をともなうものなのだと、それを遂行するには大変なエネルギーと強い意志が必要なのだということが、チャグムの葛藤からひしひしと伝わってくるので、なんだか辛くなってしまったり。

昔だったらこの結末に、新しいよい時代がやってくるんだ、万歳、と無邪気に喜んだと思うのですが、私も変えること変わることに痛みを覚えるようになったのだなーと歳食ったなーとしみじみしてしまいます。

だって新しく作った時代が期待通りのよいものになるかどうかは、その時点ではわからない。
すべては創りあげていく人びとの努力にかかってるんですからねえ。

こんなはずじゃなかった……などということのない時代にするためのチャグムの責任は、破壊に対するものより遥かに厳しいものになるはずなのです。

あー、だから読後感がなんだか重たいんだわ……。
全巻完結の重み以上に未来が重く感じられるんですよねー。

とりあえず、私としてはチャグムの今後の人生がむくわれるものとなるよう、お祈りしておきます。

タンダとバルサにはどうか平穏な日々を。

個人的には新ヨゴの大聖導師ナナイ様の古文書に萌えv
トロガイ師の大呪術に大萌えvvv

ところで、4月に「守り人」シリーズの新刊が出るそうです。
タイトルは『流れ行く者』。バルサとジグロの旅をえがく短編集で、第一巻の『精霊の守り人』へとつづく前日譚である模様。

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