『ヒーラーズ・キープ 下 たましいの砦』

ヒーラーズ・キープ (下) たましいの砦
ヴィクトリア ハンリー Victoria Hanley 金原 瑞人
4251062922

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読了。

少女向け波瀾万丈冒険異世界ファンタジーの下巻。
『ヒーラーズ・キープ 上 守りたいもの』のつづき。

ようやくタイトルに迫ってきた下巻。
大団円の結末に、よかったねー、おもしろかったねーと思う反面、ちと物足りないような気分で読み終えたお話でした。

物語の焦点は次第にタイトルに近づいて、ヒーラーズ・キープが守ってきた銀の境界線を守る戦いに絞られます。
とはいえ、登場人物たちは長い間そのことを知らないまま、自分たちの危機にその場その場で対応しているだけなんですけども。

とにかく、ミーヴたちの逃避行は苦難の連続。
さらにヒーラーズ・キープから脱出してきたサラとドージャンの道行きも、半端じゃない災難の連続です。

それでもそんなに痛みや苦しさを感じないのは、このあっさりとした描写と深いところまで踏み込まない流れ重視の展開に寄るところが大きいと思う。
はらはらどきどきに水を差さず、スムーズに物語を追っていけるのは心地よいことですが、決死の技を連発するドージャンが命を削るほどがんばっているのになぜかその深刻さがあまり伝わってこないのはいかがなものかと、個人的には思います。

つまり全体的に展開の速さが物語の起伏を大きくすることに貢献しているけれど、物語の深みを増す方向には働いていないんじゃないかなあ、というのが私の感想。
登場人物たちの行動に重心を置いた物語展開と描写が、重大であるはずの銀の境界線に関する影の王の暗躍をいささか底の浅いもののように見せている嫌いもあるような。

ようするに物語の上澄みをすくったような書き方に、物足りなさを感じてしまうのですよね。
しきさんもおっしゃってますが、私はヒーラーズ・キープの周囲や内部の細々としたことをもっと知りたいし、いやし人の修練の過程ももっと知りたいし、いやし人の力のありかたも、境界の家の見た目や雰囲気も、バーンの悪意やかれのせいでしらぬまに犯されていくいやし人たちの苦悩も、もっとこってりと読みたかった。

サラの生い立ちや、ベランドラ国の現状や国王ランドンと王妃トリーナのエピソードや、ドージャンの受け継いだドリームウェンの血の伝説や、かれの生い立ちももっとしりたかった。

そんなに細々と描いたら、とうていこの分量で話が終わるはずはないとわかってはいるのですけどね。

うーん、なんとなくこの話は『水晶玉~』の続編を書こうとしてなかなかまとまらないのをミーヴたちの設定を持ち込んで力業でまとめた、ような気がするのですが、うがちすぎか。

ミーヴに関してはそれなりに書き込んであったので、それで私は彼女に一番感情移入しやすかったのだと思われます。それに身の危険を知りつつも金貨を手放そうとしない、しみったれなところにも共感(笑。ミーヴを救うために献身的な活躍をするジャスパーがほほえましくも頼もしかったです。

それに、ミーヴの歌うシーンは圧巻。
全体的にあっさりめの文章ながらも、ここだけはと力入れて描いてあるのがよくわかる美しく神秘的なシーンでした。
ヒーラーズ・キープなんか絡めないで、純粋にミーヴのお話にすればよかったのにいと個人的に感じた瞬間……。

かくして、不満と喜びがまじりあう、複雑ーな読後感が残ったのでした。
物語としての完成度は『オラクルの光』のほうが上かもしれません。
とはいえ、面白かったことは確かなので、ディテールよりもストーリー重視のファンタジー初心者にはちょうどよい濃さのお話かなと思います。


ところで、巻末に用語集があることに読了後気づいてがっかりしました。
こういうのがあるなら上巻にも、いや上巻にこそつけてほしかった。
けっこう意味不明の固有名詞を読み流して進んでたのですよ。
最後にだけ出てきてもめんどくさくて、読む気になれません……のは私だけだろうけども。

あ、ドレイデン・ヘスターの反応は私をちと失望させました。
なんでこんなに鈍いのかな(苦笑。


「ヒーラーズ・キープ」の名が一瞬出てくる、同世界を舞台にしたファンタジー。
オラクルの光―風に選ばれし娘 (小学館ルルル文庫 (ルハ1-1))
ヴィクトリア・ハンリー
4094520538

オラクルの光~預言に隠されし陰謀 (小学館ルルル文庫 ハ 1-2)
ヴィクトリア・ハンリー 杉田 七重
4094520570

Comment

ありがとうございました。

先日は、当方のblogにコメントいただきまして、本当にありがとうございました。
さっそく下巻の感想、興味深くよませていただきました。

>なんとなくこの話は『水晶玉~』の続編を書こうとしてなかなかまとまらないのをミーヴたちの設定を持ち込んで力業でまとめた、ような気がするのですが、うがちすぎか。

このくだりで、思わず膝をたたきました(笑)
いやもう、おっしゃる通り。
確かにミーヴの物語としてなら、内容も散漫にならずに、もっと奥深い物になったんじゃないかなぁと、私も思います。
「オラクルの光」はまだ未読なので、今度はそちらを楽しみに読みたいと思ってます。

あっ、トラバの件については申し訳ありませんでした。
一応やり直してみましたが、今回ももし失敗しておりましたら、もううっちゃっててください(汗)

コメントありがとうございますv

続編云々の部分、同意していただきうれしはずかし、です。
『オラクルの光』はこちらよりもかなり話としてまとまっているので、楽しんでいただけると嬉しいです。

トラバの件はちゃんと方針を表にたてておけばいいものを、面倒がっていた私の落ち度です。
のでこちらこそ手間をとらせてすみませんでした。
送り直して下さって嬉しいです。

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