『女王エリザベスと寵臣ウォルター・ローリー 下 断頭台に消えた夢』

女王エリザベスと寵臣ウォルター・ローリー 下
ローズマリ・サトクリフ 山本史郎
4562041315

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読了。

イングランドの女王エリザベスの寵臣だったウォルター・ローリーとその妻ベスの生涯を描く歴史小説。『女王エリザベスと寵臣ウォルター・ローリー 上』のつづき。

イングランドを栄光に導いた女王エリザベスの崩御により、ローリーの権力も財もすべてが失われた。新王ジェイムズへの謀反の罪を着せられた彼は死刑判決を受けるが、王は民衆感情に逆らってまで刑の執行をすることができなかった。ローリーはふたたびロンドン塔に幽閉される。牢内での自由をある程度認められた彼はベスと子どもたちもともに住まい、そのもとにはかずかずの友人や著名人、果ては外国の外交官までが訪れるようになる。生きながらにして伝説の人となってゆくローリーだが、胸のうちに生きつづける新大陸への夢はかれを平穏な日常に止めておくことができなかった。



うーーーん。
なんという精力的で行動的で情熱的で魅力的で、はた迷惑な人なんだろう。
というのがウォルター・ローリーに対する読後の感想です。

女王の寵臣であった時は民衆の敵だったのに、凋落するととたんに愛されるようになって、国王が扱いに困るようになったり。
牢の中で自由気ままに本を書いたり仲間と集まったり実験をしたり外交官に尋ねられるようになったり、果ては皇太子の親友となってしまったり。
それでも新大陸にイングランドの植民地を築く夢をあきらめきれずに、健康も危険も顧みずに計画を実行しようとするし。
結果、熱病のために自分で指揮を執れなくなって、計画はすっかり台無しになって、息子まで失ってしまったり。

乱高下のすさまじい、ジェット・コースターみたいな人生ってほんとにあるんだなあと思わされる生涯でした。

ウォルター・ローリーというひとの成分分析をすると、夢への情熱九十パーセント、美しく粋に生きること五パーセント、ベスへの愛情三パーセント、長男への愛情一パーセント、その他の人々への愛情一パーセント、てことになりそうだ。

夢への情熱、エネルギーが洗練された容姿と態度を通してあまりにもつよくあたりに発散されるから、魅了されるにしても嫌悪を抱くにしても両極端で。

そんなローリーに魅了された奥方は、この落ち着かず他人に関心のない男から向けられる愛情のために、さんざん振りまわされることになり、つねに彼の帰りを待ちつづけることになるわけですが。

きっとこの男の三パーセントは他の男の百パーセントより濃厚で熱い麻薬のような三パーセントなんだろうなあ。
ベスは自分勝手な夫にほとんど文句をつけません。
だからといって言いなりというわけではないのだけど(そもそもローリーは妻に命令をするような人ではないのですが)、もともととてつもなく包容力のおおきなひとだったのが、ローリーを愛したことにより精神的にも肉体的にもどんどん忍耐強くなってゆくようです。
苛立ちや不安がないわけではないけれど、このひとを選んだのは自分なのだという思いが一貫していて、その潔さが彼女の魅力だなと感じました。

しかし私がその役割をせよといわれたら裸足に逃げ出しますな。
病を患いながら牢屋に十何年も暮らし続けるなんて!
ウォルター・ローリーは魂も精神も肉体も特別製の人間だったのに違いない。

と、いろいろと考えさせられる興味深い読み物でした。
十六~十七世紀にかけての世界情勢にも興味がわいてきたし。
アメリカ大陸に地歩を築く競争をしていたスペインと、こんなことやあんなことがあったとは、初めて知りました。
面白かったです。

文章の印象は上巻とかわらず、原文がどうかはしらないけれどちょっと野暮ったく、サトクリフにしては心理描写も説明文もこまかいかなと感じました。

かなり細々と描かれているラストシーンは、いつものサトクリフなら省略したのではないかと思う。
でも、この去り際の仰々しさもローリーの個性だろうからなー。

訳者あとがきを読んでいて映画の『エリザベス』を見たくなりました。

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