『エムズワース卿の受難録 P.G.ウッドハウス選集II』

エムズワース卿の受難録―P.G.ウッドハウス選集〈2〉 (P・G・ウッドハウス選集 (2))
P.G. ウッドハウス P.G. Wodehouse 岩永 正勝
4163246002

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読了。

田舎の所領ブランディングズ城に住まう、のんびりのほほんとした“綿菓子頭”のエムズワース伯爵におそいかかる日常的な災難を描く、ユーモア短編集。

うーん、面白かった……!
本を読んでいて吹き出したのは久しぶりです。
ユーモア小説と書いてあるけど私にはもすこしテンポの速いコメディーと読めました。

たぶん初老の伯爵エムズワース卿に襲いかかる災難とは、きままな放蕩息子次男坊のフレディだったり、気の強くて強引な妹たちだったり、かわいがってやったのに恩を仇で返すような事件を持ち込んでくる姪たちだったり、その恋人だったり、頑固なスコットランド人の庭師だったりとバラエティに富んでいるのかマンネリなのか、迷うような顔ぶれたち。

のんびりとしか回転しないエムズワース卿のあたまは、激変する状況についていけずにいつも翻弄されてしまいます。

その応対のとんちんかんなこと。
場当たり的なこと。
緊張に耐えきれずに思考が浮遊していってしまうこと。

いっけん大したことのない家族騒動がしゃれた文章でいきいきと描かれるのが楽しくてなりません。

ほんと、この楽しさは文章の楽しさだなあ。

この軽妙であとあじ軽やかで、深く考えると内容は何にもないんだけど読んでいて幸せになれるかんじ、いかにもイギリスって感じです。

なんとなく波津彬子のイギリスものやなにやらと雰囲気が似ている。
波津彬子のほうが情に訴えるところが多いですが。

ところで、イギリスの作家ウッドハウスは1915年から1977年までこのシリーズを書いていたそうです。スゴイ。
基本は長編で、短篇はあとから派生してきたらしい。
どうりで、人間関係に謎が多いと思ったわ。話を理解するのには支障はないんですが。

そして喜劇を愛するイギリスでは大変に愛されていて、黄金期のミステリ作家たちはかなりウッドハウスの影響を被っているとか。
あげられた名前になるほどー、と思いました。
とくにドロシイ・L・セイヤーズの主従の話を読んで、これはウッドハウスの別シリーズ、シーヴズものも読まなきゃと思いました。

収録作品は以下の通り。


序文――ブランディングズ城を求めて N.T.P.マーフィ
カボチャが人質
伯爵と父親の責務
豚、よォほほほほーいー!
ガートルードのお相手
あくなき挑戦者
伯爵とガールフレンド
ブランディングズ城を襲う無法の嵐
セールスマンの誕生
伯爵救出作戦
フレディの航海日記
特別収録作品 天翔けるフレッド叔父さん

巻末付録 P.G.ウッドハウスとミステリ
 探偵小説とウッドハウス 真田啓介

文体の問題、あるいはホームズとモダンガール A.B.コックス(アントニイ・バークリー)

収録作品改題
訳者付言




ジーヴズ・シリーズは文藝春秋と国書刊行会からでている模様。
表記も違う(ジーヴズとジーヴス)。
ううむ、どちらを読むべきか。

比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション)
P.G. ウッドハウス Pelham Grenville Wodehouse 森村 たまき
4336046751

ジーヴズの事件簿 P・G・ウッドハウス選集1 (P・G・ウッドハウス選集 (1))
P.G.ウッドハウス 岩永 正勝 小山 太一
416324090X

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