『宿縁の矢 ヴァルデマールの使者2』

宿縁の矢 (C・NovelsFantasia ら 1-2 ヴァルデマールの使者 2)
マーセデス・ラッキー 澤田 澄江
4125010285

[Amazon]


読了。

中世西欧風異世界ファンタジーシリーズ「ヴァルデマールの使者」の二冊目。
『女王の矢』の続編です。
ここからは新規に翻訳されたものなので、お初の読書となります。

砦族で虐げられていた少女タリアが〈共に歩むもの〉ローランに見いだされ、使者となるために学院に入ることとなったのが前巻のおはなし。

学院の課程を修了したタリアは白い衣を授けられ、見習い使者として研修の旅に出ることになった。
タリアの困難は彼女の〈天恵〉が使者が持つには稀なものであったこと、それがとてつもなく強かったこと、そのため周囲のものは彼女の状況を見誤り、不完全な状態で使者に任命してしまったこと。そして、すでに〈女王補佐〉の地位にあった彼女には目に見えた敵がいたこと。
タリアの指導をまかされた使者クリスは、タリアに好感を抱きながらも彼女が〈天恵〉共感をふりまわして周囲に影響を与えているのではないかという疑念につきまとわれつづける。
クリスの信頼を得られないタリアは自虐的に自らを追い込んでゆき、旅はどんどんつらいものになっていく。



というような感じでお話は進みます。

いつものようにこまやかな物語世界の描写に魅了されました。
読んでいるとタリアたちの旅のようすが細部まで目の当たりにできて、このあたりまるで旅行の体験記みたい。〈共に歩むもの〉とか荷を運ぶチラスといった動物たちの排泄処理のことまででてくるファンタジーはそうそうないと思われます。
使者のために整備された宿小屋の制度とか、連絡のための矢信号とか、ほんとにいろいろと考えてあって楽しい。それをタリアが初心者の目で見て、感じてくれるので、読み手にとっても新たな知識がすんなりと入ってくるのです。

こういう、日常的な細やかさが私のラッキーの好きなところ。

気になるのは話の冗長さですかねえ……このあたりは私は人のことを言えないのだけど、今回は話の核心からすぐにそれてしまう展開が多くて、ちょっとイライラしました。
タリアもクリスもタリアの状況が危機的なところにきているとわかっていて、何を悠長に戯れてるんだろうと。しかもタリアは別に本命がいるのにさー。クリスが高慢なハンサムなのはわかってるけど、タリアも〈天恵〉があるからとはいえ、かなりのとこ似たようなこと考えていたのに、一方的にクリスが責められるのはなんだかなーと思うよ。

それに私は、タリアのキャラクターにすこし設定展開と描写が食い違うような違和感を感じるのです。自尊心が低いと書かれているわりにけっこういいたい放題いってるなあとか。

んー、つまり私はラッキーのつくる世界は大好きだけど、人間関係の描写があまり好みでないってことなのかも。間延びしている気がするのです……。

まー、そういうところはありましたが、総じて使者の通常業務や巡回の旅についての詳しいことがわかって、かなり楽しめる巻でありました。

三部作の三巻では、研修を終えたタリアの困難が描かれる模様です。政治的なあれやこれやと意中の人とのロマンス、さらにはハードーンのアンカー王子(まだ王子)がご登場なさる模様。

刊行を楽しみにしています。

女王の矢―新訳 (C・NovelsFantasia ら 1-1 ヴァルデマールの使者)
マーセデス・ラッキー 澤田 澄江
4125009996

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)