『デイ・ウォッチ』

デイ・ウォッチ
法木綾子
4862380565

[Amazon]


読了。


二十世紀末ロシアを舞台に光の者たちと闇の者たちの勢力争いを描く、ローファンタジー。シリーズ二作目。『ナイト・ウォッチ』のつづき。

薄闇に入って異人となり、人々のためにあるいは自分のために戦う光の監視者ナイト・ウォッチと闇の監視者デイ・ウォッチ。
双方の指導者ゲセルとザヴロンの思惑のもと、チェスのポーンのように動かされるメンバーたちのストーリーです。

今回は闇の監視者デイ・ウォッチの内情がだいぶんあきらかになって、面白さが倍増。
ザヴロンの愛人で前巻での失敗のために失脚した魔女アリサ・ドンニコヴァの休暇の予想外の顛末からはじまって、記憶喪失のままなにかに導かれて不可思議な行動をとる異人と、強力なアルテファクト、ファフニールの爪を巡ってくり広げられる緊迫の追走劇。そして二つの事件の裏に隠された両陣営のボス同士の駆け引き合戦があきらかになる異端審問と、愛と悲劇とスリルとサスペンスとアクション盛りだくさんの内容です。

それぞれ読み応えのある短篇と見えたものが、さいごにひとつの流れとして収束していく様が見事。
最後まで明らかにされないとある異人の秘密がかなり予想外でした。

前回はうすかったキリスト教の影がちょっと見えかくれしてきたことも興味深い。
といっても、じっさいかれらの行動原則がキリスト教にもとづいていたり、物語世界の根底にそれがあったりするようなものではないような。なんというのかな、光と闇の抗争の中のひとつの歴史としてキリスト教の逸話もある、みたいなかんじ?

ファフニールの爪はキリスト教じゃないと思うし。この世界の法則ですっかり読み替えられたジークフリード伝説というのも面白かったです。

この混沌とした雰囲気、なんか平井和正を彷彿とさせるなあ。

それと、異人たちの……というか魔術師たちのレベルに関する描写に、ゲームっぽさとリアル感がまじっているのも面白かった。単に経験を積んだからといってレベルが上がるわけではないのは当然だけど、その人にとって最高潮の時のレベルというのがあったり、傷ついたあげくレベルが下がったままになったり、潜在力はあるのに運や意欲や状況のおかげでレベルが上がらなかったり。

まるでプロ野球選手のようですね。有望選手ながら現在は停滞期のものがいたり、成績アップを試みて間違った方向に行ってしまうものがいたり。偉大な魔術師はきっと名球会レベルなんだな、うむ。

前巻からひきつがれたアントンとスヴェトラーナの愛の行方……と書くとなんかこっぱずかしいですが、はこの巻には出てこないのかと思ったら、最後にきちんと書かれていてよかったです。よい方向にむかいそうだし。

ものすごい悲劇からはじまった話で、ボスたちの暗躍の前ではなにもかもクールに吹き飛ばされてしまうのかと思いきや、案外みんなウェットに踏ん張っているじゃないですか。

三部作の三巻目は『ダスク・ウォッチ』、完結編は『ラスト・ウォッチ』とつづくそうです。
三部作なのに全四巻なのね。

大変面白いシリーズなので、ひきつづき邦訳が刊行されることを願っています。

シリーズ第一作目はこちら。

ナイトウォッチ
法木 綾子
4901784870

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)