『滝まくらの君』

滝まくらの君
牧野礼 照世
4265820182

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読了。

大和王朝風異世界ファンタジー。
第六回ジュニア冒険小説大賞受賞作。

滝津神に守られた〈滝津島水津保国〉の一の宮は、身分の低い母親が気がふれて水に身を投げたことと、特別に滝津神にことほがれた〈滝まくらの君〉としての性質とが原因で気のふれた皇女と噂され、帝からも疎まれていた。帝からの寵愛を一身に受けるのは三の宮。だが彼女は物の怪に取りつかれたとかで病に伏せり、いっこうに回復する気配がない。みずからも三の宮を深く愛する一の宮は、妹姫の病を治すため宮廷を出る決意をする。
いっぽう、右の大臣の次男である朝霧は意に沿わぬ縁談から逃れるために宮廷を離れようとしていたところ、偶然おなじように宮中から脱走する童と出くわす。遥と名乗った身のこなしの軽い童は朝霧とおなじ十五歳。三の宮の病をなおす方法を探して旅をしたいという。興味を持った朝霧は遙とともに西の抜け道をめざす事になる。




古代日本の香しい空気を仄かに漂わせた、すっきりとまとまったファンタジー。
繊細で品のよい文章が紡ぐ色彩の豊富できらきらとかがやくような情景描写が、自然のうつくしさや幻想の妖しさを読む楽しさを味わわせてくれました。

お話は素直に進んでゆきますが、一の宮のお供の灯火の正体が最後までわからないのが隠し味。
締めくくりも後味よく、たいへん読後感の爽やかなお話でした。

じつは「薬草園の魔女の弟子」の真乃旦さんの商業デビュー作と知って読みました。
期待に違わない、品のよいお話で大満足。
「薬草園……」は西洋風ですが、こちらは和風のしっとりとした質感があってよかったです。

 雨のにおいがする。それから、むっと立ちのぼる草いきれ。
 絹すだれのような淡い雨は遠くの音を近くに伝えて、僧侶たちの低い読経の声をつれてくる。その読経の底をはうようにして、さらに低い修験者たちの祈りのうなりが、地鳴りのごとくひびいていた。

『滝まくらの君』7ページより

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