『ともしびをかかげて 上』

ともしびをかかげて 上 (1) (岩波少年文庫 581)
ローズマリ・サトクリフ 猪熊 葉子
4001145812

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読了。

『銀の枝』につづくローマンブリテン四部作の三作目。

紀元三世紀、瓦解し始めたローマ帝国の正規軍がブリテンから消えて四十年。ブリテンは海の狼と呼ばれるサクソン人の襲撃を受けるようになっていた。ローマの砦ルトピエに駐屯する地方軍団の一指揮官であるアクイラは、休暇で家族の住む家にいたところを軍の急使に呼び返される。彼を待ち受けていたのはローマ軍団のブリテン撤退の命令だった。ローマ国籍をもちラテン語を話しているがブリテンで育ったアクイラは、苦悩の果てに出港する軍の艦隊から脱走し、砦の灯台に最後の炎を上げた。



一度ハードカバーで読んでいるから、岩波少年文庫版のこれは再読なんですが。
再読なんて信じられないくらい覚えているところがなかったです。すごく衝撃を受けながら感情移入しまくりで読んだはずなのに~。なにこれ、こんなの反則だよ、なんでこんなに鮮烈なの、初体験なの、素敵なの。

こんな感覚をおんなじ本で二度も味わえて私はお得な人間なのかも。

すこしだけ思い出しました。
ローマとブリテンとサクソンというとりあわせで、当時は『クリスタル☆ドラゴン』を連想したんだった。
でもいま読んでみると『ヴィンランド・サガ』ですね、見事に。
暴力に翻弄されていくブリテン人たちの悲愴な毎日に気分が重たくなります。

この作品の秀逸なのは、ブリテン側だけでなくサクソン側の事情も公平に提示してあることでしょうか。かれらの故地の苛酷な状況が客観的かつ叙情的に描かれていて、生きのびるために新たな土地を求めて命をかけているさまには納得するし、心を打たれます。

だからといってなんでも暴力で片をつけるのはイヤなんですが。

そんな読み手をまったく甘えさせてくれない殺伐とした状況であり展開なわけですが、かれらを取りまく世界が温度から手触りまで伝わってきそうな描写文の簡潔な美しさには詩情まで感じてしまうのです。

やっぱりサトクリフはいいなあ。

下巻の展開が楽しみです。

ともしびをかかげて 下 (3) (岩波少年文庫 582)
ローズマリ・サトクリフ 猪熊 葉子
4001145820

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