『家族の深淵』

家族の深淵
中井 久夫
4622045931

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読了。

精神科医、ギリシャ現代詩翻訳家によるエッセイ集。
読みながら深い思いの底に沈んで浮かび上がれなくなるような瞬間を迎えることのあるないようもさりながら。
とても読みやすく明晰ながら日常性と詩情があり、冷静でしかも対象に対する思いやりの感じられる文章がとても好きです。

私の興味をかきたてるのは著者自身の歴史や経験について書かれたものと、精神医学に関するものと、神戸について書かれたもの。日本語について書かれたもの。

他の著者のものならだいたい面白がる外国についての文章にそれほど魅力を感じないのが不思議です。

現代ギリシア詩について書かれたものはすこし私には高踏すぎて、意味がつかめずに終わった部分がかなりあったのが無念です。

今回一番面白かったのは神戸大学の精神科病棟を改築するための準備についての話でした。

収録タイトルは以下の通り。



家族の深淵 往診で垣間見たもの
Y夫人のこと
二つの官邸へ
学園紛争は何であったのか
「マルス感覚」の重要さ
戦時中の阪神間小学生
新制大学一年のころ
雲と鳥と獣たち
旗のこと
文化を辞書から眺めると
漢字について 中国留学生との体験
治療の政治学

II
治療文化論再考 第一回多文化間精神医学会において
分裂病の陥穽
精神病棟の設計に参与する
重層体としての身体
精神病院入院患者に対する心理療法について
自己認識としての精神機能の老い
R.D.レインの死
多重人格をめぐって
医学部というところ
諸国物産絵図
歩行者の思考 土居健郎『日常語の精神医学』
日本に天才はいるか
一医師の死
居心地
きのこの匂いについて

III
ハンガリーへの旅から 一九九二年六月
カテドラルの夜
ある少女
イオニア海の午後
私と現代ギリシャ文学
劇詩人としてのカヴァフィス
リッツォス詩の映画性
カヴァフィスに捧げる十二詩 翻訳
詩の基底にあるもの その生理心理的基底
「心躍りする文章」を心がけたい
執筆過程の生理学 高橋輝次『編集の森へ』に寄せて

あとがき
初出一覧


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