『王と最後の魔術師 上』

王と最後の魔術師 上 (ハヤカワ文庫 FT カ 2-4) (ハヤカワ文庫 FT カ 2-4)
エレン・カシュナー&デリア・シャーマン 井辻 朱美
4150204705

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読了。

架空の近世都市を舞台に風俗などを丹念に上品に書き込んだ、異世界ファンタジー。
『剣の輪舞』の姉妹編。

北部と南部の合併がなり、北の王が南の貴族たちによって打倒されて国家は貴族たちの支配下に下り、長い年月が流れた。
北部の統治が不安定になり、貴族たちのあいだではひそかに王政を求める動きを懸念する者がいた。大学にいる北部人たちは王政復古を願う秘密結社を組織しているらしい。
同時に大学の史学部講座の講座では後継者をめぐる争いが活発化していた。新鋭の学者バージル・セント・クラウドもそのひとりである。だがかれは政治活動に興味がなく、専門である古代についての研究に没頭したかった。そんなおり、セント・クラウドはひとりの美貌の若者と出会い、恋におちる。相手は名門キャンピオン家のセロン。クレモンテーヌ公爵の跡継ぎと目されている。スキャンダルめいた恋に溺れる日々、古道具屋から珍しい本を手に入れたバージルはそれが王の魔術師の書であることを確信し、歓迎されない王政時代の秘密の中に分け入っていく。



『剣の輪舞』の六十年後を舞台にした、姉妹編。
単に続編といわないのは、ストーリーが完全に独立しているからでしょう。
たぶん、前作を読まなくとも理解できると思います。が、読んでいればより楽しめるのは自明の理です。

主人公バージル・セント・クラウドは若き学者。怜悧な頭脳と世間知らずな純朴さの同居した、姿形はそれほど整ってはいない、朴訥タイプ?
バージルと恋におちる美青年は、トレモンテーヌ公爵の跡継ぎと定められたセロン・キャンピオン。かれは『剣の輪舞』に登場したアレクの晩年の息子です。アレクは公爵となってからいろんな世評を騒がせることをしていたみたいです(苦笑。でもセロンの父親はこの話には直接関係ありません。

というわけで、これはボーイズ・ラブです。
前作より濃厚だと言えるかもしれない、あきらかにボーイズ・ラブ。
であるからして、拒否反応を抱く人も前作より多いかなあと思います。

でも、この作品は、前作よりもはっきりとファンタジー印がついてます。
バージルが探り出してゆく北部の王と魔術師の関係や、北部人の大地に対する信仰や、冬至の祭りでくり広げられる騒ぎには、魔法や異界の存在感がかなり濃厚。
こういうふうに、手に触れられる世界と触れ得ない世界が交錯して、どちらがどちらかわからなくなるような酩酊感は、前作にはなかったテイストです。
しかも、この作品の雰囲気からして、幻想はとてもセクシーなのです。

それに、前作にはほのめかされているばかりでよくわからなかった国の歴史や信仰がしっかりと世界に刻みこまれているところもグー。

こういったところは共著のデリア・シャーマンに寄るところが多いのかな。
歴史が感じられると世界に奥行きが感じられて嬉しいです。
しかも、こんなに魔法めいた歴史があるならば。

うう、このあとどうなるのかな。
はやく読みたいのですが、図書館で本を借りてきてしまったのでそちらを優先させなければならないのが辛いです。

王と最後の魔術師 下 (ハヤカワ文庫 FT カ 2-5) (ハヤカワ文庫 FT カ 2-5)
エレン・カシュナー&デリア・シャーマン 井辻 朱美
4150204713

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