『魔使いの呪い』

魔使いの呪い (sogen bookland)
ジョゼフ・ディレイニー 金原 瑞人 田中 亜希子
4488019552

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読了。

近世イングランドっぽい異世界で、七番目の息子の七番目の息子トムが魔使い修行をする冒険ファンタジー。第二巻。

一巻の『魔使いの弟子』は一気読みでした。二巻目はどうかなあと思っていたら、やっぱり一気読みです。

面白い!

今回は冒頭からトムが師匠の代わりにボガート退治をしているところからはじまります。
被害者は師匠の兄の司祭で、すでに瀕死の重傷。本来なら修行をはじめて半年のトムの出る幕ではないのですが、魔使いの師匠グレゴリーが風邪(?)で伏せっていてどうしても動けずに代役を務めているのです。

なんとかこの件が片付いてすこし得意になったトムですが、今度は体調の万全でない師匠とともに大聖堂の街プライズタウンに赴くことになります。そこのカタコンベには怖ろしい魔物ペインが巣くっており、師匠はかつて失敗したペイン退治に決着をつけるつもりなのです。折しも街には魔使いに敵対する魔女狩り長官が来襲。長官がひきつれてきた“魔女”のなかにトムは友人アリスの姿を発見してしまいます。

さて、トムと師匠のペイン退治の顛末やいかに。

とこんな風なお話です。

解説の上橋菜穂子さんの書かれているとおり、これは一見王道と見せかけて一筋縄ではいかない物語ですね。

なにしろ、主人公のトムが修行を初めてまだ半年のくせに師匠のいうことを素直に聞かないんです。
とくにひねくれているというわけでもなく、どころか師匠のことをかなり尊敬しているのにです。それはたぶんまだわずかしか得ていない師匠の教えを守っていたら最善の結果が得られないということがわかってしまうトムの資質と、その直感を得る自分をかなりのところまで信頼しているかれ自身の存在があるのだろうと感じます。

そう、トムは自分を信頼しているのです。
その土台は両親に深く愛されて育ったからだと思うのですが、いかがなものでしょう。

とくにトムの母親はトムに全幅の信頼を置いていて、ときにかれを自分からこの土地への贈り物だなんて大げさなことをいいます。でもトムはその母親の言葉を疑わない。母親が善であり、自分を愛していることなんか知っているから。だからその母に信頼されている自分だって信じられる、というわけ。

苛酷な修行に送り出されたけど、トムはすごく幸せな少年なんだと思います。
師匠は怖いけど人間として信頼できるし、たしかな知識と技術を仕込んでもらっているし、教え込まれたことはきちんと自分の物にしているしね。

だからどんな危機に陥っても、トムは最善の方法をもとめてどんどん決断していきます。
かれの決断の早さは徒弟になったばかりにしては驚異的だと思う。
なのでストーリーもどんどん転がっていき、息つく間もなくどんどん展開していくので、本を置く暇がありません。

トムという平凡なのにただならない主人公の存在はこのお話をかなり変わった物にしているのではと思います。

それから、この本を読んでいてわくわくさせられるのは魔使いの仕事がことこまかに描写されていることです。魔使いの仕事が技術であって魔法ではない、という設定がこのへんのいろいろを楽しくしているのです。
読んでいるうちに、なんだか自分でもボガートや魔女が退治できそうな気になってきます。
もちろん、一番はじめにかれらを見分ける目があることが大前提なんですけどね。

今気づいたけど、この話に出てくる魔のものは人間の血がことのほか好きみたい。
魔使いのしていることも、なんとなく吸血鬼退治と似ているなと思うところがあるし。

トムの母親が謎めいた背景を持つ人物であることは一巻からわかっていましたが、こんなにはやく両親のなれそめが判明するとは思わなかったなー。

魔使いにまつわる女性の話も興味深かったし、トムはどこまで行ってもアリスと縁が切れそうにないし。

この話のなかでの女性の描かれ方はときにこれはちょっと……と感じる部分もあるのですが、それも著者は承知の上で伏線をはっているのかもと思わされるところがあります。

困ったちゃんのアリスは、手なづけられていない自然の力を象徴しているのか。
それとも女のやり方と男のやり方は違うと示しているのか。
いずれにしろ、トムには師匠がいるけどアリスにはいないのでそのあたりの違いも見逃せないよね、などとふと思ったりもするのでした。

三巻を読むのが楽しみです。

魔使いの秘密 (sogen bookland)
ジョゼフ・ディレイニー
4488019587



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