『王と最後の魔術師 下』

王と最後の魔術師 下 (ハヤカワ文庫 FT カ 2-5) (ハヤカワ文庫 FT カ 2-5)
エレン・カシュナー&デリア・シャーマン 井辻 朱美
4150204713

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読了。


ヨーロッパ近世風異世界ファンタジー。

冬至の祭りでぐああっと盛りあがったあと、どんな決着をつけるのかと思っていたら、なるほど~そうきたか~という感じで終わりました。

この話、じつにじつにファンタジーっぽい目に見えない力と現実のせめぎ合いが、パワーゲームっぽいボーイズラブのドラマの一枚裏で、ながれているうごめいているはじけそうになっている感じがすごく好きです。


上巻はその見えない力、つまり魔法がかなり現実の膜を薄く引き延ばして破れそう、ほとんど破れているかも、ああ、このあとどうなる、というところで終わっていたのですが。

下巻は、祭りの狂乱が過ぎ去ったあとまたしても魔法は潜伏してゆき、でも現実にも明らかな影響を及ぼし始めているのですが、人々があまりにも魔法から遠ざかっているために、その真実を嗅ぎとるものがほとんどいずに、ともすればそんなことは本当は起きてはいない、登場人物の思いこみですみたいなぼかした書き方をされているのが、さらにまたわたしのツボだったり。

現実か夢かわからない、あいまいな雰囲気ってのが好きなんだねえ。
マジックリアリズムに近い雰囲気でしょうか。

でもってこの話は、いにしえの魔法か現在の権力、どちらを選ぶかを突きつけたあげく、表面的には穏やかな結末を迎えます。

うう、ここに言葉を費やすと完全にネタバレになってしまうな。

たぶん、大団円的なラストを期待していたむきには肩透かしだったのではないかと思うのですが。
私はこういう終わりもアリなんだなあと、ちょっと目から鱗でした。

このちょっとダークで寂しくて、物悲しいような読後感、悪くありません。

セロンとバージルの話としては……なんですが、北部と南部の話として、人間と魔法の話として、なかなか興味深い趣であったと思います。

個人的にはセロンの姉、レディ・ジェシカ・キャンピオンてかなりの食わせ物であるなーと思いました。
結局、この話の中で客観的に事件のことを理解していたのって彼女だけなのでは。

にしても、セロンとアレクとジェシカの続柄がどうしてもきちんと理解できなかったなーと溜息。石堂藍さんの解説には、セロンはリチャードとソフィアの息子だと書いてあるのですが、えーとどこを読めばそれがわかるのですかね。すみません、読解力不足で。
もしかして「公爵の死」を読み返せばいいのかな。

しかし、そんなことをするより私は先に進みたい。
これで『剣の輪舞』の直接の続編『剣の名誉』に手を出すことができます。
今度の主役はキャザリンなんですよね。
楽しみ、楽しみ。

剣の名誉 (ハヤカワ文庫 FT カ 2-6)
エレン・カシュナー 井辻朱美
4150204748

Comment

セロンはアレクの

こんにちは。感想を読ませていただきました。
確かに、魔術が本当だったのか、それともアレクの思い込みかと思わせるところが多くて、私としては「はっきり書いてくれ!」と叫びたかったです。
魔法というか、何か不思議な力(人と人が影響しあって変わっていくもの)というのが魔術師の力かなと思いました。

ところでセロンはアレクとソフィアの息子ですよね。ジェシカはアレクと舞台女優の娘で。
貴族のつながりや名前が覚えられずに苦労しましたが、読み込むほど楽しくなってシリーズにハマッています^^*

No title

ゆんさん、はじめまして。こんにちは。

ゆんさんはどっちつかずの描写にじれたほうなんですね。私はあいまいなまま勝手に発現してゆく魔術のふんいきがとても好きだったのでこれでもいいかなと思いました。
魔術は人間に影響を及ぼして関係に干渉してくる力、でもあるでしょうね。それぞれに働く度合いが違うだろうし、それぞれに及ぼす作用も異なるし、そんなふしぎな力だから魅力的なんだろうな。

セロンの続柄、教えてくださってありがとうございます。
たしかに設定はフクザツなんだけど、これが面白さのひとつでもあるので楽しんで読むに越したことはないですよね。

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