『チェンジリング・シー』

チェンジリング・シー (小学館ルルル文庫 マ 2-1)
パトリシア A.マキリップ 柘植 めぐみ
4094520821

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読了。

大好きな作家マキリップの新刊は、なんとルルル文庫からでした。
ルルル文庫、ひそかにすごいです。一見ありきたりの少女向けラノベレーベルなのに、海外ファンタジーのセレクトに関してはあなどれません。
創刊時タニス・リーが入ってたためけっこう注目していたんですが、それからかなり私的ヒットがつづいてます。
ときどき、すこし外れてるところもありますけどね。

というわけで、マキリップのルルル文庫はルルル文庫らしいのだろうかとちょっと不安を抱きつつ読んでみましたが、ルルル文庫よりマキリップ度がずっと強くて最高に楽しめました。

しかもなぜかふたたび海辺の異種婚姻譚。

ヒロインのペリは宿屋で働く普通の少女なのですが、彼女の恋した王子様キールが海にキョーレツな引力を感じて地に足のつかない人物――まさにチェンジリング・シー、海の取り換え子だったというお話なのです。

これがじつに幻想の香りがたっぷり、泡立つ白い波のレース編みの下、きらめくような水底の国の幻影がゆれてかくれる、うつくしくて悲しくて、でも後味はかなり切なけどハッピーも感じられる、そういうおはなしだった。

そうなのよ、私はこういうのが読みたかったのよー!

海のものは海へ、ひとのものはひとのもとへ。

人の世界も海の世界もおなじように存在し、おなじ重みで描かれていく。

こうして対称性の世界の均衡も保たれていくのです。

だから私としては悲劇で終わってくれてもまったくかまわなかったのですが、そしたら話の円環も閉じられてすっきりだなあと思っていたのですが、少女向けということでちょっぴり甘めのラストになってます。

いや、私としてはやはり悲劇のほうがよかったかなあと思ってしまうのですが。それではヒロインのペリの今後がちとかわいそうかも、とも思うし。

とにかく、魔法の気配の充満する、海辺の潮の香りとともにふしぎな存在がゆめのように現れては消え、少女の心もゆれうごく、そんな繊細で素敵なファンタジー作品でした。

もしマキリップが初めてでこのお話がお気に召して、他にも読んでみたいと感じた人がいたら、こちらがお薦めです。

妖女サイベルの呼び声 (ハヤカワ文庫 FT 1)
パトリシア A.マキリップ 佐藤 高子
4150200017

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