FC2ブログ

『残酷な神が支配する』

残酷な神が支配する (10)
残酷な神が支配する (10)

ようやく読み終えた。
このマンガ、途中から感想を書かなくなってましたが、それは私が内容を消化するのにものすごく時間がかかっていたからでした。いまでもちゃんと理解できたのかはわからないんですけど。
アオリに「サイコサスペンス」とふってあるけど、この話はそんなものではないと思った。冒頭から事故が起きて、ジェルミがイアンに告白するまではそれに近い展開ですが、そのあとはサスペンスではない……とおもう。
むしろ、心に大怪我を負った人間と、そのひとから目を背けずにともに生きてゆこうとする人間の、苦闘の記録といいますか。
サイコサスペンスというのは、ほとんどゆがんだ関係が破綻して暴露されたところで終わるんだけど、この話ではそのあとが重要なんです。破壊された世界を乗り越えて、それでも生きていく、あらたに自分で世界をつくっていくということが。

身体だって傷を負えばそれを癒すのに時間がかかる、傷そのものは癒えたとしても、身体はもう、傷を得る前のかつての身体にはもどりません。
心の傷は目に見えない分、他人に理解してもらうのが難しいわけだけど、ふつうの病気だって理解しようと思うひとにしか理解されないものなんですよね。
読んでいてとってもつらかったけど、最後まで逃げない書き手の姿勢には心を打たれました。
自分の都合ともかかわっているから当然とはいいながら、イアンという存在を得たジェルミは幸せだったとも思います。

途中、ジェルミがサンドラについての相反する感情に苛まれてますが、どこからか、わたしはサンドラは決心をしてあの車に乗ったんじゃないかと思い始めてました。
もしかしたら、あの事故はほんとうにジェルミのせいではなく、サンドラとグレッグとのあいだに起きたなにかのせいなのではないかと。
そのことについてはとうとうなにも明らかにはならなかったけど、最終巻巻末の山藍紫姫子氏の解説にそのことに触れたくだりがあって、私は的はずれな読み方をしていた訳じゃなかったんだと、ちょっとほっとしました。
サンドラの墓前のシーンは、ジェルミがサンドラへの感情を肯定したということだったのかな。

たいへんに消耗する話でしたが、読んでよかったと思います。

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する