『メイプル戦記』全二巻

メイプル戦記 (第1巻) (白泉社文庫)
川原 泉
4592883195



読了。

日本プロ野球に誕生した女性だけの新球団、メイプルズの初めてのシーズンを理知的に日常的にほのぼのとユーモアたっぷりに描く、少女野球マンガの傑作。文庫版の全二巻です。


「私は
三遊間のゴロを
逆シングルで捕球して
即座にノー・ステップで
一塁送球できる技術と
肩を持ったショートを
流花に要求している」

『メイプル戦記』第一巻55ページより



野球協約の変更により女子でもプロ野球に参加可能となった日本を舞台にした、ある意味では並行世界的なSFとでも呼べそうなお話です。

まったく荒唐無稽なお話であちこちでかなりの誇張やかさ上げがされています。
けれど、野球の基本そのものは外していない。
それは引用したスイート・メイプルズの広岡真理子監督のお言葉からもうかがえると思います。
彼女が主張するプレイはまさに遊撃手の見せ所、もっとも華々しくゆえにもっとも難度の高いプレイなのですから。

女性の体力、俊敏性、パワーが男性に対抗できるはずがないとか。
こんな少人数の選手だけでひとシーズン試合をし続けられるはずがないとか。
コーチを含むチームスタッフ、チーム運営を管理するフロントスタッフの人手不足にもほどがあるとか。

数えだしたらきりがないほどツッコミどころは満載なんですが、でも、それっていままでの野球マンガだって多かれ少なかれやってきたことじゃん。

むしろ現場やフロントの苦労を描いているほうが少数派なのではないかと、私は思うのですが、あんまり野球マンガって読んでないからな。それも高校野球中心でプロ野球ものはえーと……『すすめ!! パイレーツ』くらいなんで。実際はどうなのかはよくわかりません。

というわけで、このマンガは野球ファンにとってもそれほど馬鹿にするようなものではなく。
むしろ、野球の精髄、もっとも澄んだうわずみの部分をすくいとって、日常的に理知的に、たんたんとほのぼのと、辛いのや甘いのを取り混ぜたユーモアとをたっぷりとまぶして創りあげられた、川原泉的なプロ野球物語なのだと私は思います。

それに、発表当時の平成三年から平成七年、というと西暦ではどうなんだ? 最近西暦でしか時代を認識していないのでよくわかりませんが、そのあたりの本物のプロ野球を知っている人には懐かしい名前(もちろん偽名にしてあるけど、みればすぐわかる)がずらずらとでてきて、懐古気分にひたれること請け合いです。

なにしろ、スイート・メイプルズの本拠地は北海道。
ホーム球場は札幌ドーム。
そう、まだいまの札幌ドームが出来ていない頃の話なのです。

西武ライオンズと読売ジャイアンツが日本シリーズで争っていた頃。
阪神タイガースがまだまだ弱かった頃。
ヤクルト・スワローズが野村監督を得て、力をつけていく途上だった頃。
野茂がまだ近鉄で投げていた頃。
イチローの姿はまだありません。

そしてわがベイスターズがまだホエールズだった頃。

以前他人様に借りて読んだシリーズ。読んだ当時もすごく好きだったのですが、あらためて読み返してみて、そのすばらしさに感動しました。これはほんとうに名作、傑作です。

例によってこの本もYちゃんが貸してくれました。素敵な作品との新たな出会いを作ってくれてありがとうございます。

メイプル戦記 (第2巻) (白泉社文庫)
川原 泉
4592883209


『メイプル戦記』未読の方にはこちらから読むのをお薦め。
メイプルズ広岡監督とコーチ高柳氏の過去のお話です。
タイトル通り、高校野球のお話です。

甲子園の空に笑え! (白泉社文庫)
川原 泉
4592883128

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